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壬生義士伝(其の弐)

「南部盛岡は美しい国でございます。西に岩手山がそびえ、東に早地峰。

北には姫神山。城下を流れる中津川は北上川に合わさって豊かな流れに

なり申す。春には花が咲き乱れ、夏には緑、秋には紅葉。冬ともなりゃ

真綿のごとき雪こに、すっぽりとくるまれるのでござんす」(by吉村貫一郎)

壬生義士伝 下
浅田 次郎
税込価格 : \1,600 (本体 : \1,524)
出版 : 文芸春秋
サイズ : 四六判 / 373p
ISBN :4-16-319150-X
発行年月 : 2000.4
@niftyBOOKS~アット・ニフティブックス

10時間ドラマの渡辺謙さん、映画の中井貴一さん、どちらのイメージも

それぞれ良さがあって好きです。良い俳優さんに演じて貰えて

吉村先生も赤面する程、嬉しかったことでしょう♪

この本を読んでいて一番泣かされたのが、斎藤一さんのお話でした。

10時間ドラマの竹中直人さんは異色のキャスティングで驚きましたが

斎藤さんの普段の冷え冷えした目線と、沸騰するような灼熱の激情を

見事に表現していたと思います。映画の佐藤浩一さんは、硬派な

仮面を見事にかぶりつつ、人が嫌い・憎いと言っていた斎藤さんの

人らしい雰囲気、声や顔に出さない仕草での情を見せてくれました。

私は、誉められた生き方をしてきたわけじゃなかったと気が付いて

精神的にまいっていて、どんなにアルコールを飲んでも寝付けず

起きても気が緩むと身体が勝手に自殺に向かってしまう危険な

状態でした。だから、世の中を斜めからしれーっと見ている冷め切った

斎藤さんの視界が良く分かりました。取り敢えず生きているけど

いつ死んだって構わないし、こんな世の中何の意味があるんだろう、と。

新撰組が京都を出て、帰る場所を失って、伏見で休息しているときの

冷たい湿った空気と、血と埃のにおいと、緊張した隊士たちの心音。

こんな状況に陥ったら、仮眠できればかなり幸いで、出来ずに独りで

「どうしてこんな状態になってしまったんだろう?」と悩んだら最後

抜け出せなくて泣き出してしまうでしょう。そんな精神状態のところに

白いおにぎりの匂いと、落ち着いた声と、ほっとする笑顔。

これは生きる人間として、強烈な衝撃・衝動になるんじゃないでしょうか。

人心地がつくとか、生き返るとか、そういう言葉では言い表せない激情。

「いつ死んでもいい」「世の中なんてどうでもいい」そう思っていた

斎藤さんも、硬派な仮面を知らずに外して、吉村さんに殴りかかった。

この斎藤さんの温度変化。竹中さんも佐藤さんも、見事でした!

その熱に動じず「これで充分」と米粒を一つ口に運んで微笑む

渡辺さんも、中井さんも、吉村先生そのものの無償の奉仕精神!

・・・本と映画の感想がゴッチャになってますが、みんな好きなので・・・

(ちなみに、映画のBGMも素晴らしかった。「交響曲・壬生義士伝」

壬生義士伝 オリジナル・サウンドトラック

久石譲
価格: ¥2,520 (税込)
CD (2002/12/26)

amazon.co.jp

このまま大河ドラマのOPにもっていきたいような、素晴らしい作品♪)

このシーンの斎藤さんの激情が、私の中の何かをガツンと殴りました。

他人の痛みを感じることのないよう少しずつ閉ざしてきた心の扉。

いつのまにか自分の心さえも閉ざし、その上で自分にも他人にも

ウソを重ね、扉に扉、それにまた鍵をかけて、知恵の輪を組みあげて

知らないふり、見ないふり、気づかないふり、それに慣れきっていた

私の心を揺さぶって、閉ざしたドアの存在に気づかせてくれました。

ドアを開くこと、自分の気持ちを受け入れることを、自分で選んだ瞬間。

もっともっと涙がこみ上げました。物語に感動しているのと

自分の閉じこめていた感情に気づいたショックで泣き続けました。

「世界が変わる」という言葉の意味に、初めて気が付いた日です。

私の視界、目に映った情報を読む角度が変わるという感覚。

今でも覚えています。この後、物語のクライマックスの感想と

実在した吉村貫一郎さんと盛岡の街については、また後日。

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コメント

こんにちは。
さっそく遊びに来てしまいました。

「壬生義士伝」
いろんなところでいっぱい泣きましたが
私も斉藤一が南部について
握り飯を差し出されるあのシーン。
あそこに一番泣きました。

菜の花さんの文章を読んで、
ここであんなに泣けた、
そのわけを改めて考えてみたいと思います。

そして、菜の花さん…
デルフィニア戦記やら小野不由美やら
加納朋子やら……いいですよね!
また遊びに来ちゃいそうです。

投稿: ぽて | 2005年11月11日 (金) 23時36分

いらっしゃいませ、ぽてさん。読んで頂けて幸せです。
この物語は、色んな人にたくさんのことを投げかけた
と思うのです。だから、何がアタリで何がハズレと
いうことではなく、個人が受け取ったものが大事です♪

茅田さん、小野さん、ここまではけっこう聞くのですが
ブログで加納さんのお名前が出たのは初めてです♪
はっと視界のチャンネルが切り替わるような
脳の思考回路が組み変わるような、ちっちゃな革命の感覚。
慣れた日常の中にひそむ新鮮さが良いですよね~。

ぜひ、またいらして下さい。私も遊びにゆきます。

投稿: 菜ノ花 | 2005年11月12日 (土) 10時54分

こんばんは。
え?加納朋子さん…マイナー…?
「ななつのこ」から好きなんです。
「ささらさや」も印象に残ってますね…。
この方の一見弱者でありつつ実は強い登場人物たちが
大好きです。そして読後に残るほわっととした感覚。
それにしても、菜ノ花さんの表現…素敵ですね…。

お名前の表記…変換ミスしておりました。ごめんなさい!

投稿: ぽて | 2005年11月13日 (日) 22時34分

おぉっ♪再訪問頂きありがとうございます!
加納作品はマイナーというか、なんというか、皆
あっためておきたい、とっておきの物語なのかな。
一見、弱者でありつつ、実は強者。そうですね。
私も、誰に対して弱くても、何度負けてもいいから
己に対してだけは強くありたいです!
この本の持つ、示す、ちょっと裏返しな、背中に
くっついたように、そこにあるのに見えにくい、何か。
純粋さであったり、皮肉であったり、
不安であったり・・・。文章の隙間に
少しずつ隠されたそれに気が付くことができたら
そしたら、またひと味違った作品になるんですよね♪

名前の変換ミス・・・?気づいてませんでした。
ちっとも。気にしてませんし、お気になさらず(笑)

投稿: 菜ノ花 | 2005年11月14日 (月) 23時38分

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函館に行く前に読み直そうと思っていたのに 昨日、ようやく着手いたしました。 初めて読んだとき ティッシュを一箱使った本です。 この本を語るのは難しいです。 語ろうと思うだけで、 ぱらりとページをめくるだけで、 すぐに目頭が熱くなってきてしま... [続きを読む]

受信: 2005年11月11日 (金) 23時16分

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