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壬生義士伝(其の参)

南部藩脱藩→新撰組隊士、最期は大阪蔵屋敷にで自害した

吉村貫一郎という人物は実在した人です。新撰組の記録書にも残っています。

新選組始末記 改版 (中公文庫)新選組三部作
子母沢 寛
税込価格 : \820 (本体 : \781)
出版 : 中央公論社
サイズ : 文庫 / 363p
ISBN : 4-12-202758-6
発行年月 : 1996.12
@niftyBOOKS~アット・ニフティブックス

ただ、貧乏足軽侍に始まる、彼の背景や人となりは作者さんが

生み出したエッセンスで、浅田さん自身も「盛岡でなくとも良かった」と

盛岡の講演会でおっしゃっていました。例えば、仙台でも、長野でも

どこでもそういった苦しい人生を背負った人はたくさんいたでしょうし

土地が変われば変わったで、浅田さんはまた違った味わいの物語を

届けてくれたと思うのです。では、何故、盛岡だったのでしょう。

これは、おそらく、ですが、盛岡の街並が当時と変わっていないという

ことがあるのではないかと思います。大戦中、幸運なことに盛岡は

大きな空襲がなく、コンクリートに変わっただけで道路の道筋は同じです。

だから私は小説を読みながら、吉村先生や嘉一郎君&千秋君が

走り抜けた道を直ぐ想像することができました。川の音、祭りのお囃子。

華やかさで言えば全然違いますが、気候や雰囲気は京都に近いと思います。

(京都は歴史的価値で空襲を免れたのですが、盛岡はあまり意味がなかった。)

盛岡を脱藩した吉村先生は、新撰組に入り征夷大将軍と仙台藩主という

新しい主の元で働くことになりますが、守るべき彼らが大阪から江戸へ

逃げてしまい、更には錦の幟がひっくり返ってしまったことで戦意喪失し

満身創痍で南部藩・大阪蔵屋敷に辿り着いてしまうのです。これまでのこと、

故郷に残した家族を想ううち、これまでも自分の君主は家族であったことを

思い出し、家族の元に戻ることを決めるのです。藩や親友・大野様に迷惑を

かけるわけにはいかないし、身体ももう動かないし、しづ様も許してくれたから

「死」という安楽をようやく手に入れて...。まもとに言葉を交わすことが

できないまま、死に追いやってしまった大野様は悔やんだし苦しんだでしょう。

計算高い大野様が藩のこと、家族のこと、自分のことを犠牲にして

秋田に攻め入る決議をするシーン。分かる気がします、違うかもしれないけど。

義を曲げてはいけない。そのまま終わってはいけない。そうしなければ

それまでの色んなものが、無為になってしまう。心を通す。意を残す。

このときばかりは、計算はなかったと思うのです。感情だったのではないかと。

結果、盛岡は戦に敗れ、藩主はとらえられ、大野様は極刑にされました。

でも、大野様の意図はやはり通っていた。盛岡には今でも南部家の殿が

いらっしゃいます。返して下さい、戻って下さいと、民がお願いしたから。

後から事柄だけを客観的に見れば「バカなことしてるな」って思うことだって

その時の取り巻く状況や背景、その人の心境や立場・人となりを考えれば

「ああ、仕方なかったんだね」と辿り着くことができる。「もうちょっと要領良く

できたかもしれないから、今度何かあったら、良かったら相談してね」と言える。

自分の都合や我が儘を、身近な人にもっと話して分かって貰う努力をしよう。

閉じこめて封印して、自分だけが分かっていればいいという孤立した己の世界。

自分の孤独を認識できれば、他人の世界を、もっと多くのものを見られる。

閉じこもったままの世界、どんどん吸収して大きくなる世界、それぞれです。

重なり合うことも、反発することもある。恨むことも、双方が傷つくことも。

でも、世界というのは、そういう個性があって初めて動いているんだということ。

「私は私でいいのだ。染まってもいいし、染まらなくてもいい」それを己で

選んだのなら、それも個性なのだから。考えて悩んで、歩いて止まって。

そして、時々まわりを見てみよう。音を聞いてみよう。何かが変わるかも。

・・・けっこう書きましたが、おしづ様、嘉一郎君のこともまだ書きます!(笑)

それほど、私に影響を与えてくれた本だということ、残しておきたい。

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